最高裁判決による不動産評価12 Dec. 2022
こんにちは。税理士の野中です。
今回は令和4年4月19日最高裁判決による不動産評価について説明します。
この判決の事案では、被相続人は当時約90歳で銀行から約10億円を借り入れて、約14億円の不動産物件を購入しました。約3年経過後に被相続人が亡くなり、相続税の計算における不動産の評価額(財産評価基本通達に従ったもの)は3億円程度しかならず、購入額から10億円も低いものでした。結果として、この10億円もの乖離と銀行からの借入金を考慮することで、この事案の相続税額はゼロとして相続税を申告しておりました。
これに対して、国税庁は当該不動産について不動産鑑定士による鑑定評価額に従って、不動産の時価は約13億円として、相続税額は約2億円であるとしました。
納税者はこれを不服として裁判で争いましたが、最高裁は納税者の申し立てを退け、国税庁の判断が正しいとしました。
この結果、上記の事案のような財産評価基本通達による評価額と時価(購入価額に近い価格)との差額が多額になることを利用して相続税を節税する方法は、安易に導入するのはリスクが高いと考えられます。
次回は、過度な相続税対策とみなされないように不動産を購入する場合の注意点について説明します。